大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和28年(う)2984号 判決

被告人 相原太郎

〔抄 録〕

論旨第四点。

然しながら、原判決は、決して被告人が構造及び装置における重大な故障その他の事由により安全に操縦できない車馬又は軌道車を操縦して無謀な操縦をしたという事実を認定しているのではなく、車馬又は軌道車の交通に因り、人の殺傷又は物の損壊があつた場合においては、車馬又は軌道車の操縦者又は乗務員その他の従業者は、命令の定めるところにより、被害者の救護その他必要な措置を講じなければならないとしている道路交通取締法第二十四条第一項所定の義務に違背した事実を認定しているのであり、而も、これが義務に違反する原判示事実の明らかに認め得られることは、すでに論旨第三点において説明したとおりであつて、原審が右違反者の処罰規定である同法第二十八条第一号を適用処断したことは洵に正当である。もとより、同法第二十四条第一項所定の車馬の操縦者が自己の車馬により人が殺傷され又は物の損壊された事実があるに拘わらず、全くこれが事実を認識するところがなかつた場合は、たとえ、その操縦者において被害者の救護その他必要な措置を講じなかつた事実があるとするも同条違背の罪に問い得べきかぎりではないが、被告人が、原審の認定しているように、業務上の過失により人を自己の操縦する自動車に衝突せしめて同人を死に致したるに際し、その事故を認識したこと、仮に人を殺傷した事実を知らなかつたとするも、少くとも物を損壊する程度の事故の発生を認識したことは、証拠上優にこれを窺がい得るところであり、それにも拘わらず、直ちに被害者の救護その他必要な措置を講ずることなく、そのまま逃去した事実ある本件において、到底右第二十四条第一項所定の義務に違背したものとして同法第二十八条第一号の罪責を免かれ得ないところである。論旨は理由がない。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!